内定承諾と退職交渉は、承諾が先です。内定を承諾し、入社日が固まってから、いまの会社に退職を伝えます。
順番は「承諾 → 入社日の確定 → 上司への報告」の3段です。理由は一つで、内定先との交渉と、いまの会社との交渉を同時に抱えないためです。
在職中に転職活動をしていて、内定の返事の期限と退職の申し出のタイミングで迷っている人向けに書いています。承諾前に上司へ「相談」するのは、先にやらなくていいことでした。
私の場合、書類も含めて二桁落ちたあとに1社に決まりました。内定の連絡を受けたとき、退職をいつ伝えるかは決めていませんでした。結局、内定を承諾して入社日が固まってから、直属の上司に「相談」ではなく「報告」の形で伝えました。転職先は「まだ公にしていない」で通しました。順番をこの形にしたことで、引き止めの話が始まったときに、すでに戻る場所がない状態で話ができました。
内定承諾と退職交渉は、承諾して入社日が固まってから伝える
結論は、内定承諾が先、退職交渉があとです。理由は、交渉の相手が2社いると、どちらの話も中途半端になるからです。
私の場合は、手元にある内定が一つだけでしたので、承諾を保留して他社の結果を待つという選択肢が、そもそもありませんでした。
退職を先に伝えると、上司との間で「いつ辞めるか」「本当に辞めるのか」という話が始まります。同じ時期に、内定先からは「返事をいつまでに」「入社日をいつに」という話が来ます。この二つは互いに影響しあいます。上司に引き止められて入社日を後ろにずらしたくなり、内定先には返事を延ばしたくなる。片方の答えを出さないと、もう片方の答えが出せない状態になります。
先に承諾して入社日を固めてしまえば、いまの会社との話は「いつ辞めるか」ではなく「どう引き継ぐか」だけになります。私の場合、この順番にしたことで、退職の話し合いは引き継ぎの段取りの話に終始しました。
3段の順番は次のとおりです。
- 内定を承諾する — 労働条件を書面で受け取り、内容を確認したうえで、期限内に承諾の返事をします。
- 入社日を確定する — 承諾のあとに入社日を決めます。いまの会社の退職に要する期間(就業規則の申し出期限と引き継ぎ)を見込んで、余裕のある日にします。
- 直属の上司に報告する — 入社日が固まった状態で、「退職させていただきたく、ご報告です。次が決まっており、最終出社日はこの日を考えています」と伝えます。
3段目の「相談ではなく報告」の形は、内定が出てからが本番だった。退職交渉と引き止めに書きました。この記事では、その前の2段に絞って書きます。
承諾前に退職を伝えるとどうなるか
承諾する前に上司へ話す人もいます。「まだ決めきれないので、いったん上司に相談してから」という流れです。私はこれをやりませんでした。承諾前に話すと、次のことが起きやすいからです。
- 引き止めの最中に、内定先の返事の期限が来る — 上司との話し合いは一度では終わりません。数日おきに面談が入ります。その間に内定先の期限が来て、上司との話が決着しないまま返事を迫られます。
- 「条件を上げるから残ってほしい」と言われて、比較が始まる — 承諾前は、いまの会社の逆提示を受ける余地が残っています。比較を始めると、内定先の条件交渉もやり直したくなり、話が戻ります。
- 内定を辞退した場合に、辞める意思を伝えた状態で残ることになる — 承諾前に伝えて、結果として残る選択をすると、上司には「一度は辞めると言った人」として記憶が残ります。
迷っている段階の相談相手は、いまの上司ではなく家族や社外の人にしました。年収の条件を内定先と詰めるのも、承諾前に済ませておく作業です。この点は年収は、入社したあとでは上がらないに書きました。
内定の返事はいつまで待ってもらえるか
返事の期限は、内定の連絡に書かれていることがほとんどです。まずその期限を確認します。書かれていなければ、こちらから「いつまでにお返事すればよいでしょうか」と聞きます。
目安として、転職サイトの案内では、内定の返答は3〜5日を目安にするのが望ましい、と書かれています(出所: エン転職「転職Q&A【内定承諾】入社の返事、いつまでにすべき?」)。同じ案内では、期限内に結論が出ない場合は本人から延長を相談することはできるが、会社が待てる期間は限られており、延長を申し入れたことで内定を取り消される場合もある、とされています。会社によって幅があるので、ここに書いた日数を前提にせず、自分の内定通知に書かれた期限を優先してください。
私の場合は、内定の連絡で示された期限のなかで承諾を返し、入社日はそのあとで確定しました。退職に要する期間を先に見込んでおけば、承諾を急ぐことと、入社日に余裕を持たせることは両立します。
期限までに決めきれない要因が「労働条件が書面で来ていない」ことなら、延長を頼む前に、条件の書面(労働条件通知書)を先に出してもらうよう依頼するほうが筋が通ります。次の項で書きます。
退職を伝えたあとの内定取り消しの不安と、法的な整理
「退職を伝えたあとに内定を取り消されたらどうするか」は、この順番を考える人の多くが抱く不安だと思います。私も同じでした。不安を消すために、承諾前に3つを確認しました。
1. 労働条件を書面で受け取る
会社は、労働契約を結ぶときに、契約期間・就業場所と業務・労働時間・賃金・退職に関する事項などを、書面(本人が希望すればメールなども可)で明示することになっています(出所: 厚生労働省 労働基準法に関するQ&A「採用時に明示しなければならない労働条件」労働基準法第15条)。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示の対象になりました(出所: 厚生労働省「労働条件明示のルールが変わります」2024年4月施行)。承諾前にこの書面を受け取り、面接で聞いた条件と合っているかを見ます。口頭の内定だけで退職を伝えるのは避けました。
2. 内定取り消しの位置づけを知っておく
厚生労働省の案内では、採用内定によって労働契約が成立したと認められる場合、内定取り消しは解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは無効になる、と説明されています(出所: 厚生労働省 確かめよう労働条件「内定や内々定を取り消された時…」労働契約法第16条)。これは「取り消されることはない」という意味ではなく、「会社の都合で自由に取り消せるものではない」という整理です。個別の事情で判断は変わるので、不安が具体的にある場合は、労働局の相談窓口や専門家に確認してください。
3. 退職の申し出の期間を知っておく
期間の定めのない雇用では、法律上は退職の申し出をした日から14日を経過したときに退職となります(出所: 厚生労働省 労働契約ポータルサイト「労働契約の終了」民法第627条)。ただし就業規則に「1か月前まで」などの申し出期限が書かれている会社が多く、実務ではそちらに合わせて引き継ぎの日程を組むことになります。入社日を決める前に、自分の会社の就業規則を読んでおきます。
法律の内容は2026年9月時点のものです。ご自身の契約と会社の規定については、労働条件通知書と就業規則、必要なら厚生労働省の相談窓口で確認してください。
転職先を聞かれたら答えるか
私は答えませんでした。「まだ公にしていないので」の一言で通しました。
理由は、社名を出した瞬間に「あそこは大変らしい」「うちのほうが」という比較の話が始まるからです。比較が始まると、報告のつもりだった場が、相談の場に戻ります。退職の話し合いを引き継ぎの段取りに絞るために、社名と業種は伏せました。
聞かれたときの答え方は、次のような形にしました。
- 「転職先はどこ?」 — 「まだ公にしていないので、控えさせてください」
- 「同業?」 — 「先方との約束もあるので、お話しできる段階になったらお伝えします」
- 「条件はいいの?」 — 「条件で決めたわけではなく、次にやりたいことで決めました」
最初の面談で言わずに通せると、そのあとの面談では聞かれなくなりました。
平日の夜と土日で活動を回していた時期の進め方は、在職中の転職活動を、平日の夜と土日だけで回すに書きました。
よくある質問
承諾のあとに、いまの会社から逆提示があったらどうしますか
承諾した内定を辞退して残る選択をする人もいますが、内定先との信頼も、自分の信用も大きく損ねます。私は逆提示を受けても比較しないと決めてから承諾しました。比較したいなら、承諾の前に済ませておくことだと思います。
退職の申し出から入社日まで、どれくらい空ければよいですか
自分の会社の就業規則にある申し出期限に、引き継ぎの実働と有給の消化を足した日数を見込みます。私は、就業規則の期限より余裕をもった入社日にしました。ぎりぎりにすると、引き止めの話が長引いたときに入社日を動かす交渉が発生します。
口頭で内定と言われました。書面が来る前に退職を伝えてもよいですか
私はやりませんでした。労働条件の書面を受け取り、内容を確認してから承諾し、そのあとで退職を伝えました。書面が遅い場合は「承諾の前に労働条件を書面でいただけますか」と依頼して問題ないと思います。
注意していただきたいこと
これは私1人の経験にもとづくものであり、うまくいくことをお約束するものではありません。効果や結果には個人差があります。就業規則の申し出期限、引き継ぎに要する期間、内定先が待てる日数は、会社と職種によって変わります。
それでも、内定を承諾して入社日が固まってから退職を伝えるという一点は、やっておいて損がなかったと思っています。
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