転職しようと決めたとき、私が最初に開いたのは求人サイトでした。たぶん、多くの人が同じことをすると思います。
ただ、いま振り返ると、求人を見るのは最後でよかったです。
最初にやるのは3つだけでした。①職務経歴を1件だけ書く、②年収の下限を決める、③落ちた記録の付け方を決める。合計で3時間かかりません。
この3つが終わっていないと、いい求人を見つけても出せません。私は最初の1ヶ月、そこで止まっていました。
毎日求人を見ていたのに、応募は数件しか進まなかった
最初の1ヶ月、私は毎日求人を見ていました。通勤中にスマホで見て、家に帰ってからパソコンで見ました。気になったものはブックマークしました。
1ヶ月経って、ブックマークは数十件になりました。応募できていたのは数件でした。
動いている感覚はありました。毎日何かをしていたからです。ただ、増えていたのは「見た求人の数」だけでした。
理由ははっきりしています。見つけたときに、出せる状態ではなかったからです。
いい求人を見つけると、応募ボタンの先に職務経歴書の提出がありました。持っていませんでした。「これから作ろう」と思って、その日はページを閉じました。次の日も同じことをしました。
希望年収の欄も同じです。数字を入れる欄で手が止まりました。決めていなかったからです。空欄のまま出す勇気もありませんでした。
締切が近い求人ほど、出せませんでした。準備に時間がかかるからです。見つける力より、出せる状態のほうが先に要りました。
私が動いたのは、前の仕事が嫌だったからではありませんでした。長く関わった案件の打ち上げで、先方の方の「ここからが本番ですね」という一言を聞いたときに、自分は毎回いちばん面白い手前で降りているのだと気づきました。私の場合、最初にやるべきだったのは求人を見ることではなく、この「動く理由」を1つに絞ることでした。
自己分析シートは、一度も見返さなかった
準備らしいことをまったくしていなかったわけではありません。自己分析シートは埋めました。
強み、弱み、大事にしたい価値観、これまでのモチベーションの上下。項目を埋めるのに数時間かかりました。埋め終わったときは、かなり進んだ気になりました。
そのシートを、私は一度も見返しませんでした。
面接でも使えませんでした。書いてあったのが「主体性がある」「成長したい」といった言葉だけだったからです。
面接で聞かれるのは、そこではありませんでした。聞かれたのは「そのとき何を見て、どう判断したのか」でした。抽象語をいくら並べても、その答えは出てきません。
自己分析に意味がないとは思っていません。ただ、順番としては先ではありませんでした。具体を1件書けば、強みも価値観もそこから勝手に出てきます。私にとってはそういうものでした。
代わりにやる3つと、かかる時間
いまもう一度ゼロから始めるなら、この3つから手をつけます。時間も一緒に書きます。
① 職務経歴を1件だけ書く(2時間)
全部を書こうとしないことです。いちばん自分で決めた仕事を1件だけ選んで、それを書きます。
型は決まっています。状況、判断、行動、結果。この4つを順に書くだけです。「やったこと」ではなく「そのとき何を選んだか」を書く形になります。詳しくは通る書類と通らない書類の、たった1つの違いに書きました。
どれを選ぶかで止まる人が多いと思います。私も止まりました。選ぶときは、この3つのどれかに当てはまるものにしました。
- やり方を自分で変えたことがある仕事
- 誰かに反対された、または相談せずに進めたことがある仕事
- 終わったあとに、次から手順が変わった仕事
共通しているのは、どれも「自分の判断が入っている」ことです。逆に、言われた通りに進めて終わった仕事は、書いても内容が薄くなりました。大きい案件かどうかは関係ありませんでした。
1件書ければ、残りは同じ型に流し込めます。私は2件目からは30分で書けるようになりました。
この1件は、書類のためだけのものではありません。面接で「これまでで一番の経験は」と聞かれたときの答えも、年収を聞かれたときの根拠も、ここから出てきます。1件書くと、3つの場面が同時に片づきます。
② 年収の下限を決める(30分)
いくら欲しいか、ではありません。いくら以下なら断るかです。
私は決めないまま面接に入って、希望を聞かれたときに「現状維持でも構いません」と答えました。その場で口にした金額が、そのまま提示額になりました。あとから上げ直してもらうことはできませんでした。
やることは2つです。いまの年収を出すこと。前年の源泉徴収票の「支払金額」の欄が、賞与を含めた額面の合計にあたります(非課税の通勤手当などは入りません)。前年のうちに転職している場合は、この票に前職分が合算されているかどうかも見ておきます。ここは制度に関わる部分なので、最新の扱いは国税庁の案内でご自身で確認してください。そのうえで、そこから下げてもいい理由が自分の中にあるかを考えること。
理由が見つからないなら、下限はいまの年収と同額にしておきました。30分で決まります。
決めておくと、求人票の年収欄が意味を持ちはじめます。下限を下回る求人を、開いた瞬間に外せるようになりました。迷う時間がまるごと消えます。
③ 落ちた記録の付け方を決める(15分)
これがいちばん地味で、いちばん後から効きました。
落ちる前に、記録する場所と項目を決めておきます。私はスプレッドシートに5列だけ作りました。日付、企業、どの段階で落ちたか、分類、気づいたこと1行。それだけです。
分類は5つの箱に分けています。中身は落ちた理由を、5つの箱に分けるに書きました。
なぜ先に決めるかというと、落ちたあとには作れないからです。不採用の連絡が来た日に、表を設計する気力は残っていません。私は最初のいくつかを記録し損ねました。
枠さえ先にあれば、あとは1行足すだけで済みます。15分の作業です。
効いてくるのは、5件ほど溜まったあとです。分類の欄が同じ記号で埋まっていたら、直す場所が1つに決まります。1件ずつ見ていると全部が自分の否定に見えますが、並べると偏りに見えます。見え方が変わるだけで、続けやすさが変わりました。
この順番には理由がある
3つの順番は、入れ替えないほうがよかったと思っています。
①が先なのは、②と③の材料になるからです。年収の根拠も、落ちた理由の分類も、自分が何をやってきたかが言葉になっていないと出てきません。①を飛ばして②をやると、希望額に根拠がつかず、聞かれたときに黙ることになります。
②が次なのは、求人を見る前に要るからです。下限が決まっていない状態で求人票を眺めると、全部が候補に見えます。数が絞れません。私の数十件のブックマークは、これが原因でした。
③が最後なのは、使うのが先の話だからです。ただし、作るのは応募の前です。使う日に作ろうとしても間に合いません。
合計して3時間弱です。求人を眺めるのに1ヶ月使ったことを考えると、割に合う使い方だったと思っています。
先にやらなくてよかったこと
逆に、最初にやらなくてよかったことも書いておきます。どれも私が先にやろうとして、時間だけ使ったものです。
- 履歴書の清書 — 応募先ごとに直す部分はほとんどありません。1社目の応募が決まってからで足りました
- 資格の勉強 — 取り終わるまで応募が止まります。応募しながらでもできることを、応募の前に置く必要はありませんでした
- 業界研究のノート作り — 応募先が決まる前に広く調べても、面接では使えませんでした。使えたのは、受ける会社が決まってから調べた分だけです
- 退職日から逆算した計画 — 相手のある話なので、思った通りには進みません。先に決めると、焦って条件を落とす方向に効きました
どれも「やった感じ」は強く残ります。ただ、応募が1件も進まないという点では、求人を毎日眺めていたのと同じでした。
「まだ転職するか決めていない」段階でもできる
この3つには共通点があります。どれも、いまの会社に知られずにできます。
- 応募しません
- どのサービスにも登録しません
- いまの会社に何も言いません
やっているのは、手元で書類を1枚作ることと、数字を1つ決めることと、表を1つ作ることだけです。誰かに送るものは1つもありません。
むしろ、決めていない段階のほうが向いていると思っています。①を書き終えたときに「思ったより書けることがある」と感じるか、「これしか書けない」と感じるか。その感触自体が、判断の材料になると思います。
私の場合は、決めたあとに書いたので順番が逆でした。書き終えて感じたのは後者です。書けることが少ないという事実を、応募を始めてから知ることになりました。先に知っていれば、最初の1ヶ月の使い方は変わっていたと思います。
3つが終わってから、求人を見た
3つを終えてから求人サイトに戻ると、見え方が変わっていました。
下限を下回る求人は、年収欄を見た時点で外せました。仕事の内容も、①で書いた1件と重なる部分があるかどうかで見るようになりました。ブックマークは減って、応募は増えました。
求人を見るのは最後でよかった、と書いたのはこの意味です。求人票は、こちらに基準ができてから初めて読めるものでした。
基準がないまま眺めていた1ヶ月は、情報を集めていた時間ではなく、決めることを先送りしていた時間だったと思っています。
注意していただきたいこと
これは私1人の経験にもとづくものであり、うまくいくことをお約束するものではありません。効果や結果には個人差があります。業界や仕事の内容、いまの状況によって、必要な準備は変わると思います。
それでも、求人を見る前に3時間だけ手元の準備に使うという順番は、もう一度やるとしても変えないと思っています。
最初の3時間を、そのまま渡せる形にしました
この記事で書いた3つのうち、①は職務経歴書テンプレート、③は落ちた理由の分類表にそのまま対応します。②の根拠の作り方は年収交渉スクリプトに、面接での使い方は想定問答50問に入れた4点セットです。
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買い切りです。効果や結果には個人差があります。


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